営業戦略における新規開拓の重要度
営業としての仕事は大きく分けて「既存の顧客のリピート率を増やす」ということと「新規顧客を獲得する」という2つがあります。
業種や業態によりそのどちらかに比重を置くかが変わってきますが、いずれにしてもどちらか一方だけをしていれば、それでよいということはありません。ただし難易度ということでいうと、既存顧客のリピート維持に比べて新規顧客を獲得することは何十倍も大変です。
イメージ的には荒れ地を農業ができるところまで開墾する作業と、作られた田畑を維持していく作業の違いと言えばわかりやすいと思います。
新規開拓が難しいのは、自社の製品やサービスに興味を持ってくれる人を見つけるという手間に加えて、その人に実際に成約に至るまでの行動を起こしてもらうところまで持っていかないといけないからです。
特にスタートアップなどこれから成長をさせていく新興企業にとっては、どのように新規顧客を獲得していくかを綿密に計画していかなければそもそも事業が立ち行かなくなってしまいます。
営業でよく言われることとして「1:5の法則」がありますが、これは既存顧客のリピートに比べて新規顧客の開拓には5倍の経費や手間がかかるということを言います。
新規開拓には多くの経費がかかるため、つい守りの営業をしたがる担当者は開拓作業を疎かにしてしまうものですが、それでは結局企業全体の売上は先細りをするばかりとなってしまいます。
新規顧客を獲得するために行うこと
新規開拓営業をしていくために行う手法をざっと挙げていくと、「テレアポ」「飛び込み営業」「DM」「メールマーケティング」「イベント/セミナー」「Webコンテンツ作成」といったものがあります。
そのどれを行うかは業種によって適する割合が異なってきますが、どれか一つの方法だけに偏るのではなくできるだけ多面的に多くの人の目に触れる形で展開していくかということが大切になってきます。
心理学的にも「単純接触効果」ということがあり、人は同じものを繰り返し目にしているうちに印象がだんだん良くなっていくということを示します。もし最初のアプローチがうまくいかなくても、見込み顧客に何度か違う形で認識するようにしていくことにより少しずつ興味を深めていってくれるようになるはずです。
この時注意したいのが、熱心に新規顧客を開拓しようとするあまり、同じ顧客にしつこく食い下がるように営業をするというやり方はしてはいけないということです。
いわゆる「土下座営業」ですが、「買ってくれるまで動きません」といった粘りの営業方法よりも一回あたりのアポイントメントは長々行わず短いアプローチを何度も繰り返した方がずっと成約の確率は高まります。
営業エリア内の見込み顧客であれば担当営業者が何度も足を運んで面会を求めるのもいいですし、電話もしくはDM.、メールなど相手に負担のならない形で何度か連絡をしていくのも効果的です。
軽いレベルで見込み客に通知をするという方法と、実際に成約に至る行動に移ろうとする段階で手厚くケアできる方法との二段構えにしておくと、興味を持った新規顧客を逃さずに囲い込むことができます。
見込み客を選定する方法
新規顧客を獲得するためには、自社製品の適切なターゲットを絞り込むということも大切です。
冒頭で新規顧客の開拓を荒れ地から農地にしていく作業という例えを出しましたが、これから農地を作ろうとするときにわざわざ岩場や湿地帯を選んでしまっては作業の大半は無駄になってしまい、適切な成果物を得ることはできません。
具体的な例で言えば、化粧品を販売する企業が年配の男性に向けて広告を打ってもほとんど購入に至ってくれる人はいないでしょう。最初の段階でこの見込み顧客の絞り込みをすることができるかどうかが成約率を高める重要な要素になってきます。
そういった意味で最初に見込み客を多く集めるために有効な手段となるのが、イベントやセミナーの開催です。
毎年特定の分野に特化した展示会が東京など大都市で開催されていますが、展示会で自社ブースを持って取り扱っている製品を多くの顧客に見てもらうことにより、その後の営業がかなり楽になります。
その他にも自社で展示場やモデルルームなどを作って興味のある人に多く来場してもらい、そこでリストを作成していくということもまた新規顧客の開拓に便利です。
ただし、そうしたイベントやセミナーは参加するだけでもかなりの金額がかかりますし、自社製品の良さを知ってもらえるようなブースを作成するとなると広告代理店やデザイン会社を通してかなり大規模な企画をしていかないといけません。
ですので大規模なイベントをむやみに開くというよりは、費用対効果を考えてリストをどういった形で作っていくかを考えていくことが重要になってきます。
獲得後には素早くアフターフォローをすること
新規顧客の獲得をする時には、成約後のアフターフォローをきちんとすることも大切です。
これは既存顧客のリピート率アップにもつながってくるのですが、成約をとれたからといって油断してアフターフォローをしないと、顧客から不信感を得ることにもなってしまいます。
自分が顧客になった場合で考えればわかると思いますが、熱心に営業をかけてくる担当者に対しその熱意を買って購入をしてあげたのに、いざ購入が決まった途端にぱったり連絡もくれなくなったということになればがっかりして二度と買いたいと思わないでしょう。
製品やサービスの多くは購入後に不具合がないか確認をして必要に応じて修理や交換をしていくことになります。そうしたときにあからさまに面倒そうな対応をしたり、いつまでも修理・交換を渋っているということがあればそこから企業の信用が落ちていってしまいます。
ましてや現代はインターネットでSNSやポータルサイトで簡単に情報共有ができる時代ですので、そうした対応のまずさはあっという間に拡散していってしまいます。
逆にいうと何らかのトラブルがあってもそこで迅速な対応をとることができればそれがよい噂となって広がっていってくれる可能性があります。あまり噂の管理ばかりに熱心になっても本来のサービスが疎かになってしまいますが、信用に関わる部分については特に慎重に行っていきたいところです。
また特にBtoBの場合には、初回取引からいきなり大口の注文が入るということはほぼありません。初めて取引をする企業に対してはまずは取引相手の信用度を確認してから徐々に取引額を大きくしていくというのが通常です。裏返して考えると特に信用もないはずなのにいきなり大口の注文をしてくる企業は新規顧客としてやや警戒をした方がよいかもしれません。
最初は少額の取引から行い、きちんと仕入れや支払いをする相手であるということがわかった頃に初めて大口の注文がとれるというのが一般的ですので、あまり焦って大きな契約をとろうとするのではなくまずはしっかりと信用のある取引ができるということを示していきましょう。
新規顧客を常連になってもらうまでには、一人の営業マンの力だけでは不可能です。
営業に関する情報は担当者一人だけで抱え込むのではなく、スタッフ全員で共有をして不在時に誰でも同じように対応ができるようにしていくということも間接的な新規顧客囲い込みの方法となります。
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