リードナーチャリングは、見込み客という意味を伝える「リード」と、育成もしくは養成するという意味を持つ「ナーチャリング」の二つの言葉から成り立っています。つまり、リードナーチャリングとは「見込み客を育てていく」という意味があります。どのようにして顧客を育てていくことができるのでしょうか?
リードナーチャリングとはどんな営業手法なのか?
通常、BtoBにしても一般個人の顧客にしても、いきなり商品のことを知って衝動買いをするケースというのは少ないものです。ある程度商品やサービスについての情報を取り入れて、他の似ている商品と比較した上で、一つに絞って購入を決めます。
この傾向は、より大きな商品、長持ちする商品、金額が高いもの、生活や業務において重要な影響を与えるものを購入する時に特に強くなります。そのため、自社の商品やサービスについて全く知らない状況から、名前やブランドを覚えてもらうことから始まり、特徴やメリットを知ってもらうように情報を提供します。
そして、他社の商品と比べて良い部分、お得度などを納得してもらうという、いわば顧客の「育成」をすることで、購入意欲を高めていくことができるのです。これは新規購入者を獲得するだけではありません。商品、そして企業そのものへの信頼度が高まることによって、リピーター客となり繰り返し購買をしてくれることにもつながります。
リードナーチャリングは、持続的な購買を続ける顧客を獲得することにもつながる、重要な営業手法と言えるのです。
リードナーチャリングの4つの手法をご紹介!
一口にリードナーチャリングと言っても、実際に用いられる手法は異なります。用いる媒体によって変わってきますので、自社でどの媒体が一番商品に適しているか、取り組みやすいものはどれかを考えて選択することができるでしょう。
メール配信
比較的簡単に取り組むことができるのが、「メール配信」という手法です。いただいた名刺やアンケート調査などから得られたメールアドレスをリスト化して、そのリストにメールを配信します。
メールマガジンの中では、商品の詳細や実際の使用シーンなどを載せることができます。いかにも販促メールという印象を与えないためにも、商品の開発ヒストリーや社員のコメントなど、自由な感じの内容を載せていくこともできます。新しい商品についての情報を逐次掲載することによって、リピート客の関心を引き留めるという効果も期待できます。
SNS利用
二つ目の手法としては「SNS利用」が挙げられます。現代においては最も利用しやすく効果が出やすい手法ということで、多くの企業が利用するようになっています。
使えるSNSとしては、Facebookやインスタグラム、LINE、Twitterなどがあります。SNSを使うことのメリットとしては、かなり広い範囲に情報を発信できるということです。また、企業とユーザーとの距離が近くなり、よりブランドへの愛着が湧くというのも大きな魅力です。
それこそがリードナーチャリングの目指すところでもありますので、上手にSNSを利用して営業効果をアップさせたいものです。炎上などのリスクもありますが、気軽に始められますし、資金もほぼ必要ありませんので、中小企業でも導入しやすいというのも魅力的なポイントとなっています。
セミナー開催
「セミナー開催」もリードナーチャリングの有効な手法です。セミナーには主に二つの方法があり、リアルの会場での開催、そしてネット上でのセミナーです。
リアルの会場を使う際には、会場準備や資料の配布などの手間がかかりますが、直接見込み客と顔を合わせることができますし、独特の熱気が生まれるため、より顧客の関心を高めやすいという強みがあります。また、質問がある場合、すぐに会場で行えるというのも魅力です。
一方、ネット上でセミナーを行う場合は、場所の制約がないため、多くの人を集められるというのが最大の魅力です。また、動画を一度作ってしまえば、同じもので何回もできて労力を節約できるというのもポイントです。しかし、セミナーの熱気が伝わりにくい、質問などがしにくいこともあるというマイナス点もあります。
リターゲティング広告
最後に、「リターゲティング広告」を利用するという手法もあります。具体的には、グーグルやヤフーなどのアド広告を使うことが多くなっています。
見込み客がサイトを閲覧している時に、自社の広告が表示されるように出稿することで、商品やサービスを思い出してもらうことができます。ある程度広告費がかかるという点はありますが、よりたくさんの人に広告を出すことができますし、ある程度関心のある人に向けたものとなるため、効果が高いというのがうれしいところです。
また、広告を見てから自社のサイトに訪問する人、購買した人の履歴が分かって、分析ができるというのも強みです。これによって、どんなルートで営業をしていったらいいのか、どんな層に特に関心を持ってもらっているのかを知ることができます。
リードナーチャリングをすることのメリットとデメリットとは?
リードナーチャリングのメリット
リードナーチャリングを営業に取り入れることにはいくつものメリットがあります。
リピーターが増加する
まず、自社の商品やブランドそのものへの理解が深まり、中には愛着を持ってもらえる顧客も出てきますので、最終的な購買に結びつけるのが容易になるという点です。
リピーターを作ることができるようになり、新しい商品ができた時など、購買意欲をゼロから高める必要がなく、比較的速いスピードで購入を決めてくれる可能性が高くなります。これは販売の安定性を保つために役立ちますので、全体的な販売実績を向上させるのに役立ちます。
また、顧客の囲い込みができるというのもメリットです。何らかの商品広告を見てすぐに購入を決めるという人は、全体の中では比較的少ないものです。いろいろな情報に接してから初めて、期間にして数か月、長いと一年越しで購入を決めるという人もかなり多くいるのです。
その時まで、リードナーチャリングによって自社の商品のアピールを続けることによって、他社に流れることなく顧客を囲い込みできるのです。確かに継続的にアプローチをするというのは手間がかかることですが、広い層にわたって顧客を確保できますので、それだけの価値があると言えるでしょう。
休眠顧客を呼び戻すことができる
もう一つのメリットは、休眠顧客を呼び戻すことができるというものです。昔自社の製品を購入したことがあるものの、その後購買がずっとなされていないという休眠顧客は、少なくても自社について、そしてその商品について知っています。より購買に至る確率が高い層と言えるものです。
こうした層を放置したり、手放してしまったりするのは実にもったいと言えるでしょう。そこで、こうした顧客にリードナーチャリングを行い、もう一度購買ニーズが生じた時に、他の商品に関心を向けてしまうのを防ぐことができます。また、新たに商品を買おうという購買意欲を再び取り戻すきっかけになるかもしれません。ゼロの状態から新規顧客を見つけるよりもずっと効率的なリードナーチャリングの利用法と言えるでしょう。
リードナーチャリングのデメリット
こうしたメリットがある中で、いくつかのデメリットもありますので注意をしながら導入していきましょう。
成果までに時間がかかる
スタートアップの場合は、購入に結びつくまでに一定の時間がかかるという点です。もともとリードナーチャリングは、いきなり商品やサービスを買ってくださいとアプローチするものではなく、自社の製品の良さを知ってもらって納得した上で良い顧客となってくださいという概念が強い手法です。
一度固定客となれば、リピートの可能性も高くなりますが、そこまで行くにはある程度の時間がかかります。
人件費と広告費がかかる
もう一つのデメリットとしては、リードナーチャリングを具体的に行うための手間(人件費)と広告費がかかるという点です。メール配信やSNS導入のための準備をしたり、毎回定期的に内容を更新したりしないといけません。
単に商品の情報を流すだけでなく、ユーザーの興味を持たせるために面白い内容とする必要もありますので、さっと作れる類のものではないのです。また、アド広告を入れるのであれば、広告出稿費がそれなりかかります。
こうした準備や更新のための手間、そして費用がかかるということをあらかじめ検討するようにしましょう。きちんと考慮に入れていないと、始めたのはいいが継続するのは難しいという事態に陥ってしまい、リードナーチャリングの計画がつぶれてしまうことになります。
リードナーチャリングの成功事例
リードナーチャリングのメリットや手法を理解することができたとしても、具体的に自分のところにどのように適用していったらいいのかが難しいということもあるかもしれません。そんな時は、どのようにリードナーチャリングを導入したのかの事例をチェックして学ぶことができます。
NEC社の事例
たとえば、NECではリードナーチャリングをプロセス化して、効率よくアプローチできるようにしています。
まず、入り口となるのは同社のビジネス情報サイトです。ここに入ってきた時点である程度の関心を持っているということですので、見込み顧客を獲得できるチャンスが高くなります。その中から、特に関係する業者を絞って顧客を選別していきます。
そして、その顧客にメールを配信すると同時に、サイトの中でどんなページを特に読んでいるのかという点を分析します。こうすることによって、より個別の関心事を見極め、それに適した情報を配信できるからです。
その後、より関心度が高いと思われる顧客をその中からさらに選び、直接テレアポを取り、営業スタッフが訪れるというプロセスを採っています。情報提供と顧客分析を組み合わせて、それぞれに合わせたアプローチをしているのが特徴と言えるでしょう。
SAP社の事例
BtoBのソフトウェアを開発、販売しているSAP社は特にセミナーという手法を採用してリードナーチャリングを成功させています。
定期的にウェビナー、つまりネット上で行うセミナーを開催しています。そのセミナーの中では、同社が販売している製品を使ってどのように現場で役立てているか、どんな効果があったのかというのを、具体的な導入事例を取り上げて紹介しています。
こうすることで、実績があるということをアピールできますし、それぞれの企業が具体的な導入方法を理解することができるようになります。さらに、セミナーに参加した人たちが質問したことをまとめて、それに答えていくという付属的なセミナーも実施しています。
より顧客に近い形でのセミナーが開催できますし、顧客のニーズや疑問点を探れるというメリットがあります。こうした方法を採ることで、セミナーの参加者はどんどん増え続け、700社以上が登録するようになっています。
リードナーチャリングに有効なおすすめツール
リードナーチャリングをサポートする有効なツールとしておすすめなのが、「ferret One」というプログラムです。
ウェブサイトの構築をサポートして、プログラム不要でPDA化することができます。また、アクセス解析機能がありますので、見込み客がどのようなポイントに食いついているのかを知り、顧客選別を行うのが容易になります。
さらに、商品やサービスの紹介資料などをダウンロードできるページを楽に作ることができますし、見込み客の業種などに分けてメール配信できる機能もあります。さらに、ブログやSNSを連動させて、顧客とのコミュニケーションが取りやすいというのも特徴となっています。
まとめ
リードナーチャリングとは、見込み客の養成、育成という意味を持つ営業手法です。
潜在的な見込み客に対して、継続的に情報配信、アプローチを行い顧客の商品への理解度と関心を高めると同時に、ブランドや企業への信頼度を向上させることができます。それによってリピート客を増やせるというメリットもあります。
具体的には、メール配信やSNSの利用、セミナー開催、アド広告を使ったリターゲティング広告などを利用することができます。こうした手法を使うことによって、過去に商品を購入したものの、長い間新しい商品の購入に至っていないという休眠顧客に購買意欲を持たせることができるなどのメリットがあります。
実際にリードナーチャリングを導入して成功している企業の事例も多いので、具体的な導入法を学んで自社でも取り入れていくことを検討できるでしょう。
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